主要作物の転換期に農家・農協・町・農業改良普及所はどう行動したかNo.4
~上湧別町寒地園芸営農センターの果たした役割~
上湧別町寒地園芸営農センター(以下園芸センターと省略)は上湧別町と上湧別農協、北海道農業改良普及所などで構成されていた上湧別町農業推進協議会で運営されていました。
ここで掛かる経費は町と農協の折半でした。
当時のワープロで印刷されたパンフレットにあるように圃場を有していて、農業改良普及員(以下普及員と省略)が圃場で栽培試験を行い、その試験結果に基づいて栽培方法、施肥や防除などについて農家を指導していました。
当時の普及員は農家と栽培に関して積極的に指導し、密接な関係を持っていました。
普及員も園芸センターの圃場で栽培試験を行えることから、教科書で見聞きしたことよりも、自分で試験した実際のデータの裏付けがあるため、自信を持って指導することが出来ました。
これは若い普及員にとって、とても大きいことでした。
タマネギの普及拡大時には、タマネギの品種試験なども行われ普及に貢献していました。
バイオテクノロジーによるアスパラガス苗の増殖を行う施設では、ウィルスフリーの作物の増殖も実施されました。
イチゴやナガイモ、ニンニク、ユリ根などはアブラムシが付くとウィルスに感染し、作物の個体全体がウィルスに汚染され収量が2~3割低下します。
ウィルスに汚染された作物でも生長点(茎頂)の部分はウィルスに侵されていないので、この生長点を0.2~0.5mmの大きさに切り取り、培養してウィルスフリー苗(ウィルスに侵されていない苗)を作成することも実施しました。
このウィルスフリー苗でアスパラガスに代わる第2,第3の高収益作物を普及しようとしたのです。
しかし、ナガイモは湧別川沿いで砂利の多い畑では形がいびつになり作付けに適さず、適地が限られます。
ユリ根は単価が高いものの、植え付けから収穫まで3年かかる特殊な野菜です。
ニンニクはタマネギの収穫時期とニンニクの播種時期が重なるなど作業日程の調整が必要になります。
イチゴやスターチスなどの花も一時期、タマネギを作付けしていない農家でハウス栽培されましたが長続きしませんでした。
アスパラガスと同時期にバイテクで増殖したこれらのウィルスフリー苗も、農協が主要作物に選んだタマネギと作業時期が重なったり、手間が掛かったりすると第2,第3の高収益作物として選定されなくなります。
そこで作付けが伸びたのが、平成の初めに当時20~30代の若者が導入したブロッコリーでした。
次回に続く